東京高等裁判所 昭和24年(新を)2859号 判決 1950年7月10日
被告人
松本竹史
主文
本件控訴はこれを棄却する
理由
弁護人小淵方輔の控訴趣意書第一点について。
仍つて原判決を精査するに、原判決はその主文に於いて被告人を懲役六ヵ月並びに罰金六千円に処する旨記載して居り乍ら罰金刑につき其の不完納の場合に於ける労役場留置期間の記載を欠き、従つて原判決は刑法第十八条第四項に違反するものであること弁護人所論の通りである。然し乍ら刑事訴訟法第四百二条によれば被告人が控訴をし又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言渡すことができない。従つて、本件の如く単に罰金刑の言渡のみがあつて、その不完納の場合の労役場留置期間の定めを言渡さなかつた場合に於いても、控訴審がこれが留置期間の定めを言渡すことは、前記法条にいわゆる原判決の刑より重い刑を言渡すものとなり、これが是正を為すことができないのみならず、かかる違法を理由とする控訴は被告人及び弁護人に於いては被告人に不利益な主張を為すことに帰するから許容することができないので、控訴の事由として到底採用し難い。論旨は其の事由がない。